【技術コラム 『磁石』第5回】

じゃあF1エンジンを積めばいい?プロの設計現場のリアル

「そんなにネオジム磁石がすごいなら、全部のモータをネオジムにすればいいじゃないか」。 

そう思われるかもしれませんが、実際のモータ開発現場はそんなに単純ではありません。 

F1エンジンが扱いづらいのと同じように、ネオジム磁石にも明確な弱点があります。

それは「熱に弱く、高温になると磁力が落ちる(減磁)」ことと、「錆びやすい」ことです。 高温の過酷な環境では、ネオジムではなく、高価ですが熱に強い「サマリウムコバルト磁石」を選ぶのが正解となります。

また、「強すぎる磁石」は別の問題も引き起こします。

私が過去に、効率を極限まで追求して「極端に磁力の強い磁石」を使った試作モータを作った時のことです。 いざ回してみると、磁力が強すぎるせいでコギングトルク(磁石と鉄心の引き合い)が異常に大きくなり、机に激しい振動が伝わり、実験室中に凄まじい異音が響き渡るという大失敗をしました。

モータ設計は「ただ強い素材を使えばいい」というものではなく、用途や環境に合わせた全体バランスの調整が不可欠なのです。 

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